
遍路で使用するバックパックの選び方や、実際に私が遍路で使用したバックパックの感想、そして役立つ機能の付いているオススメモデル等について解説します。
バックパック選びに重要な5つのポイント
① 信頼と実績のあるアウトドアメーカーのものを選ぶ

タウンユースのものではなく、アウトドアユースのバックパックを選んだ方が快適です。
そして遍路中に壊れたりするトラブルを防ぐことや、使い勝手の良さ等を考えると、信頼と実績のある有名アウトドアメーカーのものから選択することをオススメします。

実際に遍路中バックパックが壊れてしまったという方もいましたから。
具体的には、ドイター、グレゴリー、オスプレー、マックパック、モンベル、マムート、ノースフェイス、アークテリクス、ブラックダイヤモンド、カリマー、ホグロフス、グラナイトギア、ミレー、バーグハウス、ロウアルパイン、タトンカ等のメーカー・ブランドから選べば間違いないです。
② ヒップベルト(ウエストベルト)のついているものを選ぶ

①は小容量のバックパックについている簡素なウエストベルトで、②は中容量以上のバックパックに備わっているパットのついたヒップベルトです。
この2つは一見同じようなものに見えますが、使用用途が異なります。


『ショルダーストラップ』(肩)から『ウエストベルト』(腰)の位置までの長さの違いがわかるでしょうか?
①の簡素なウエストベルトは、バックパックが上下左右に揺れるのを防ぐための用途のベルト。こちらはウエストのくびれの部分に装着します。
②のパッドがついているヒップベルトは、肩だけでなく腰でも担ぐことにより、荷重を分散させる用途のベルトです。こちらは腰骨に載せる感じで装着します。
遍路は長期間にも及ぶものなので、肩だけに荷重がかかるバックパックでは、肩に痛みを抱えながら遍路をするはめになります。
そのため、腰に荷重を分散させることで肩の負担や痛みを軽減できる②のようなパットタイプのヒップベルトの備わっているバックパックを選ぶことをオススメします。
なお腰で担ぐ用途のヒップベルトが付いているもので、一番小さな容量のバックパックは23ℓのものになります。
③ 蒸れない背面システムが搭載されたものを選ぶ

遍路は山(高所は気温が低くなる)もありますが、ほとんどが平地。そして一日中歩き回るため、かなり汗をかきます。
普通のバックパックでは、背中に熱を帯び、汗で蒸れるため、不快な思いをすることになります。そのため背面に空間が保たれ、通気性の良い機能が備わったバックパックを選びましょう。

基本的に真冬に遍路をするという方以外は、この機能が搭載されたものを選んだ方が無難。また汗による悪臭の防止にも効果的です。
このような背面に空間のあるシステムを採用しているメーカーは、現状ドイター・グレゴリー・オスプレー・マムートの4社のみとなります。

もし手持ちのバックパックを使用したいという方や、上記4つ以外のメーカー・ブランドの製品を使いたいという方の場合は、以下のアイテムを装着することをオススメします。
④ 必要な容量のものを選ぶ

遍路に必要な容量の大まかな目安は以下。
タイプ | 容量の目安 | 荷物量の目安 | 増えるもの |
---|---|---|---|
宿泊メイン | 20〜26ℓ | 5kg以下 | ー |
野宿メイン | 26〜32ℓ | 8.5kg程度 | 寝袋、マットレス、蚊取り線香、 汗拭きシート、着替え等 |
野宿+自炊 | 32〜38ℓ | 10kg程度 | バーナー、クッカー、食材等 |
遍路の場合、荷物が増える=足腰の負担が増し、即疲労に直結するので、必要最低限のものだけ持っていきましょう。
下手に大きなサイズのバックパックを選んでしまうと、あれもこれもと詰めこめるため、予想以上に荷物が増えてしまう可能性が高いです。
またバックパックにスペースがあると、歩いている際にバックパックの中で荷物が揺れてしまいます。
もし容量で迷ったら小さな方を選びましょう。

私の場合、宿泊で26ℓのものを選びましたが、ノートパソコンを積んでもまだ余裕がありました。
⑤ パネルローディング or トップローディング

バックパックの取り出し口のタイプは、主に2パターンあります。
基本的には同じメーカー・モデルのバックパックでも、『トップローディング』と『パネルローディング』のどちらのタイプも販売されています。
『積載能力が高い』
トップローディングは、主にアウトドアユースのものに使用されることが多い。
単純にザックの容量が増える。ポケットが付いていたり、雨蓋に物を挟むこともできる上、雨蓋の上にも荷物を積むことも可能なので、積載能力が高い。その反面、荷物の出し入れがやや面倒。基本パネルローディングのものより容量が多い。
『荷物の出し入れが容易』
パネルローディングは、主にタウンユースのものに使用されることが多い。
積載能力が低い反面、荷物の出し入れが容易。またジッパーには南京錠をつけることも可能なので、防犯性も高い。ただしジッパーが噛んだり、壊れた場合にはどうにもならない。またしっかり閉めておかないと動いてるうちに開いてしまうこともまれにある。基本トップローディングのものより容量が少ない。

これに関しては荷物の量や機能性を重視しても良いですが、単純にデザインや好みで選んでも問題ないと思います。

ちなみに雨蓋タイプは、荷物をぎっちり詰めた場合、構造上肩より高くなります。
もし雨蓋タイプで菅笠を使用するのであれば、荷物を詰めすぎないよう注意が必要。バックパック上部が笠に干渉してしまいます。
※ ジッパータイプの場合は、肩より高くはならないため、特に気にする必要はありません。
私が遍路で使用したバックパックはオスプレーの『ストラトス 26』

選んだ理由は、単純明快。消去法でバックパックを選びました。
当時『腰で担ぐヒップベルト』と『蒸れない背面システム』が備わったバックパックを出していたメーカーは、ドイター、グレゴリー、オスプレーの3社。
その中で『最小容量』のものは、ドイター『フューチュラ』かオスプレー『ストラトス』の2つ。
24ℓ(ジッパータイプ)か、26ℓ(雨蓋タイプ)に関しては、私は雨蓋タイプのデザインが好きなので26ℓを選択。
そして当時のドイターのデザイン・カラーリングはイマイチだったので、オスプレーを選択・・・したのですが、ストラトス26のNEWモデルの黄緑の差し色が気に入らず、あえて型落ちモデル(ブラック×グレー)をアマゾンで購入しました。
歩き遍路で実際に使用した感想

『蒸れない背面システム』と『ヒップベルト』は特に重宝しました。
この2つの機能は遍路のような長旅では必要不可欠な機能と言っても過言ではないと思います。

毎日汗をかいていましたが、背面の通気性が良いため快適でした。
実は背負い心地に関しては、NEWモデルの方が腰回りの部分がシームレスになっていてフィット感が良い(改善されていた)ことに加え、クッション自体の厚みも増していたのですが、旧モデルでも特に不満に思うことはありませんでした。

ただし新モデルは、旧モデルに比べ、必ず何かしらの機能がアップデート(改善)されています。
なので、よほどデザインやカラーが気に入らない等の理由がない限りは、最新モデルを選ぶことをオススメします。
歩き遍路にオススメのバックパック5選
現在、腰でも担ぐヒップベルトと蒸れない背面システムを兼ね備え、かつ遍路に適した容量のモデルは以下の5つのモデルです。
❶ ドイター(フューチュラ・SL)
重量 | 1.4kg(26ℓ) |
---|---|
サイズ | 1サイズのみ |
背面長調整機能 | ロードリフトストラップ等で対応 |
容量(ℓ) 男・女 | ジッパータイプ 23・21 27・25 雨蓋タイプ 26・24 32・30 36・34 40・38 |
ハイドレーション システム | 装着可能 |
ザックカバー | 付属(緑) |
国 (メーカー) | ドイツ |
現行モデル | 2021年にモデルチェンジ |
サイズはワンサイズのみで、背面長は調整できません。
そのため身長が170cm前後の方は良いと思いますが、160や180cm前後の方は、ショルダーハーネスやロードリフトストラップの調整で対応する感じになります(ショルダーハーネスの付け根部分に可動域があったり、通常より下の位置に付いているため、多少は対応可能)
男性用は『フューチュラ』
ジッパータイプの容量は、23ℓ と 27ℓ。
雨蓋タイプの容量は、26、32、36、40ℓ。
なお36と40ℓのみモデル名が『フューチュラ Pro』になります。
女性用は『フューチュラSL』
ジッパータイプの容量は、21ℓ と 25ℓ。
雨蓋タイプの容量は、24、30、34、38ℓ。
34ℓと38ℓ のみ、モデル名が『フューチュラ PRO SL』となります。
● 参考動画
❷ グレゴリー(ズール・ジェイド)
重量 | 1.42kg(30ℓ MD/LGサイズ) |
---|---|
サイズ (背面長) | 『XS/SM』 『SM/MD』 『 MD/LG』 |
背面長調整機能 | ?♂️有り(マジックテープ) |
容量 (男・女) | ジッパータイプ 30・28 雨蓋タイプ 35・33 45・43 55・53 65・63 |
ハイドレーション システム | 装着可能 |
ザックカバー | 無し(別売り) |
国 (メーカー) | アメリカ |
現行モデル | 2023年にモデルチェンジ |
男性用サイズは、背面長41〜51cmの『SM/MD』、背面長46〜56cmの『MD/LG』の2サイズ。
女性用サイズは、背面長36〜46cmの『XS/SM』、背面長41〜51cmの『SM/MD』の2サイズ。
なお小さいサイズだと大きなサイズに比べ、容量が2ℓ減ります。
男性用は『ズール』
ジッパータイプは、30ℓ。
雨蓋タイプは、35、45、55、65ℓ。
女性用は『ジェイド』
ジッパータイプは、28ℓ。
雨蓋タイプは、33、43、53、63ℓ。
● 参考動画
・旧モデル(2023年9月2日時点では、まだ在庫あり)
・新モデル
❸ オスプレー(ストラトス・シラス)

重量 | 1.26kg(26ℓ) |
---|---|
サイズ (背面長) | 1サイズのみ |
背面調節機能 | ?♂️有り |
容量 (男・女) | ジッパータイプ 24・24 34・34 雨蓋タイプ 26・26 36・36 44・44 |
ハイドレーション システム | 装着可能 |
ザックカバー | 付属(黄緑色) |
国 (メーカー) | アメリカ |
現行モデル | 2022年にモデルチェンジ |
NEWモデルはデザインやカラーも変わりましたが、違いは主に以下の2点。
▶︎ 背面調整機能が、マジックテープ式 → はめ込みタイプ。
▶︎ 蒸れない背面システム(エアスピードサスペンション)の通気性が35%向上。
なおオスプレー製品は、トレッキングポールをくくりつける位置が上記2つのものとは異なります。
オスプレー独自のシステム『ストウオンザゴー』は、バックパックを下ろすことなくポールを着脱できる優れもの。これはオスプレー製品のみ備わっている機能ので、おそらく特許を取っているのだと思われます。
オスプレーは、伸縮タイプのトレッキングポールを使用したい方にお勧めです。

唯一、ワンサイズでありながら背面調整機能が搭載されているバックパックなので、誰でもフィットする作りになっています。
男性用は『ストラトス』
ジッパータイプは、24ℓ と 34ℓ。
雨蓋タイプは、26、36、44ℓ。
女性用は『シラス』
ジッパータイプは、24ℓ と 34ℓ。
雨蓋タイプは、26、36、44ℓ。
● 参考動画
❹ マムート(デュカン)
重量 | 910g(24ℓサイズ) |
---|---|
サイズ (背面長) | 1サイズ |
背面長調整機能 | なし |
容量 (男・女) | 雨蓋タイプのみ 24・24 30・30 |
ハイドレーション システム | 装着可能 |
ザックカバー | 付属(オレンジ) |
国 (メーカー) | スイス |
現行モデル | 2022年 |
重量は驚きの1kg以下。超軽量なのが大きな特徴です。
チェストストラップは、ベルトではなくドローコードタイプ。
またショルダーハーネスにポケットが付いているので、スマホ等を収納することができます。かなり伸縮するポケットなので、ドリンクを入れることも可能とのこと。
ヒップベルトの左側はポケット。
右側はポケットではなく、トレッキングポールをくくりつけるためのドローコードが備わっています。こちらはよりコンパクトになるZ型(折りたたみ式)のトレッキングポール用となります。

ちなみに旧モデル(2020年)との違いは『本体やパーツのカラー変更』だけっぽいです。
男性用『デュカン』
女性用『デュカン Women』
※ 女性用は胸の膨らみの都合上、ショルダーストラップにポケットは付属していません。
● 参考動画
❺マムート(デュカン スパイン)
重量 | 1290g |
---|---|
サイズ (背面長) | 1サイズ |
背面長調整機能 | なし |
容量 (男・女) | ロールトップシステム 28〜35・28〜35 50〜60・50〜60 |
ハイドレーション システム | 装着可能 |
ザックカバー | 付属(オレンジ) |
国 (メーカー) | スイス |
現行モデル | 2022年 |
デュカンと同じく、チェストストラップはドローコード。
こちらは『雨蓋タイプ』でも『ジッパータイプ』でもなく、口をくるくると回した後、バックルで止める『ロールタイプ』です。
そのため、荷物の量に応じ、28〜35ℓの間でサイズを自由にを変えることができます。
そして肩と腰部分が可動することにより、適切な荷重分散や自然な歩行をサポートする『マムートアクティブスパイン』というシステムが採用されています。
この2点がこのモデルの大きな特徴です。
こちらも右側のヒップベルトには、トレッキングポールをくくりつけるドローコードが備わっています。なおデュカンスパインの場合は、その上に装着できる『防水ポーチ』も付属。

こちらも旧モデル(2020年)との違いは『本体やパーツのカラー変更』だけっぽいです。
男性用『デュカン スパイン』
女性用『デュカン スパイン Women』
※ 女性用は胸の膨らみの都合上、ショルダーストラップにポケットは付属していません。
● 参考動画

5つのモデルとも必要な機能は備わっているので、迷ったらデザインやカラー等の見た目の好みで選ぶのがベストだと思います。
バックパックの購入方法(実店舗での試着は必要?)

実際に現物を背負ってみて選んだほうが良いかどうか気になっている方も多いと思いますが、これに関しては正直どっちでも良いと思います。
正直なところ、『ちょっと背負ったくらいでは使い心地の差がほぼ分からない』ということと、40ℓ以上ならともかく『荷が10kg以下のモデルなのでそこまで気にしなくても大丈夫』という理由からです。
実際に私も購入前に、先ほど紹介したドイター・オスプレー・グレゴリーの3つのモデルを背負ったのですが、多少の違いはあるような気はしますが正直よく分からなかったです。紹介した4つのメーカーなら背負い心地・機能・使いやすさに関してほとんど差はないように思います。
もし実店舗で実物を見て購入したいという方は、とにかく地域最大の大型店へ行くこと!
というのも、バックパックは展示場所をとるので、例え大型店でも今回紹介したバックパック全部を揃えている店はないからです(地方の超大型店は不明だが、基本、店によって力を入れているブランドがあったりで品揃えに偏りがあるのと、背面が蒸れないものはおそらく夏の低山向けモデルであり、オールシーズン向けの定番モデルではないため)。
そのため基本的には店をはしごする必要があります。
探すのが面倒臭い人や安く買いたい方は、ネット購入が良いと思います。

私は、型落ち品(気に入った色のもの)がamazonにしか売ってなかったのでネットで買いました。
バックパックの背負い方について

まずヒップベルトの位置を決めます。おおよその位置は腰骨に載せる感じといったら良いでしょうか。
その後、体にフィットするようベルトの長さを調整します。

次はショルダーハーネスの調整です。
体にフィットするようぐぐぐーっと後ろに引っ張っていきます。
この時、絞り上げすぎてヒップベルトの高さが変わってしまわないよう注意が必要です。
また左右のバランスにも気をつけましょう。

次はチェストストラップです。
これでショルダーハーネスの肩の位置を調整しつつ、バックパックを体にフィットさせます。
※ なおチェストストラップの取り付け位置は、数十センチ上下に移動可能です。

次はロードリフトストラップを引っ張り、バックパックを体に密着させます。

最後に全体の微調整をして完成です。
なお荷の重さや量によりベストなフィッティング位置はその都度変わるので、定期的にこの作業をやったほうが良いです。

正直な所、バックパックのフィッティングについては、遍路宿のご主人や女将に聞けば大抵教えてくれるので、とりあえず背負って四国にさえいけば問題ありません。
まとめ
・『信頼と実績のある有名アウトドアメーカー』のものを選ぶ。
・『背中が蒸れないシステム』のものを選ぶ。
・『腰でも担げるヒップベルト』のものを選ぶ。
・サイズに悩んだら小さい方を選ぶ。
バックパック選びに関しては、基本的にはこの4つさえ押さえておけばOKです。

バックパックは、もちろん遍路が終わった後も使えます。
24ℓ〜26ℓのバックパックは、日帰り登山や山小屋1泊、普通の旅行の場合だと1〜3泊くらいなら対応可能です。