今日は船に乗るため、いつもよりかなり早めの6時45分に出発。天気は曇り。
山の中の集落の巻
やってもらいたい!
でも残念ながらまだ営業時間外だし、今日はそんな時間もない。残念。
後から出発したコウさんに抜かされた。
彼は膝だか腰が悪いだかで、山道は苦手だそうだが、平地はかなり速い・・・というか、こんなに速く歩く彼の姿は初めて見た。おそらく私と同じく船に乗るために急いでいるのだと思われる。
港だ!
釣具店は見たことがあるけど、漁具店ってのは初めて見た。あとマツモトキヨシのようなフルネームの屋号ってのも今時珍しい。
瓦屋根のファミリーマートってのも珍しいな。
あの赤い橋を渡った先にお寺がある。
げっ!あの坂を登るのか・・・と思ったけど、違ってホッとした。
第36番 青龍寺(しょうりゅうじ)
時間がないので急いで読経。
船に間に合わない可能性が高いので、奥の手を使うか悩む。どうしよう・・・
やっちゃうか!
奥の手であるヒッチハイクを敢行。
ちょうど納経を済ませたお姉さん2人にお願いしたら快諾してくれたのだ。大阪から来た姉妹らしい。
「えー!そんな歳に全然見えへん!若く見られて得やろ〜?」
遍路に来てからこういうことをよく言われるのだが、どうも私は10才くらい若く見えるらしいのだ。だが女性と違って男の場合は“ なめられるだけ ”なのでそんなに得ではないような気がする。
でも個人的にはなめられるくらいの方が楽だと感じている部分もあるし、ある意味得なのかな?
目的地に到着し、礼を言って車を降りる。これで余裕を持って歩ける・・・かと思いきや、ガソリンスタンドのおじさんに声をかけられて意外な事実が判明した。
なんと間違って戻りすぎてしまったようだ!
痛恨のミス。結局、同じくらいの距離を歩く羽目になってしまった。ズルハヨクナイ。いや、ただ単に間抜けなだけか。
布教おじさん
道を戻っている最中におじさんに声をかけられた。「急いでるので歩きながらでいいなら」と断り、話を聞くことに。
「実質小卒。中学は100日くらいしか行ってない。教師のその日の気分で殴られたりするのがいやだった」とか、「30歳くらいまで30回くらい職を変えたりした」とかそんなことを言っていたのだが、なんだかんだで最終的にはうまくいったそうだ。それはよかった。
で、成功に必要な哲学がどうこうとか、日蓮聖人と法華経が最強みたいなことを言っていたのだが・・・これは要するに、布教活動だろうか?
「おじさんいつもこんなことやってるんですか?」
「そう。もう警察にも10回くらい呼ばれている」
これには腹を抱えてゲラゲラ笑ってしまった。
70歳だが元気ハツラツ!ポーズも若い!歩くペースを少し落としたとはいえ、ついてくる根性には感服。これからも布教活動に精を出しつつ、警察にも通って欲しい。
でも誰が警察に通報してるのだろう。地元の人かな?欲を言えば、悪いおじさんではないので通報しないであげて欲しい。
埋立巡航船乗り場
よし!なんとか間に合ったぞ。
しかしここは巡航船乗り場では無い。
乗り場は、ここからさらに奥に入った所だったのだ。
先に到着していたコウさんが教えてくれたのだが、言われなければ気づかなかった。危ない危ない。
巡航船に乗船。埋立〜横浪までの船賃は、620円也。
ここからおよそ1時間の船旅である。しかしやっぱり船は速いな。
静岡のおじさん
船に乗り合わせていた【静岡のおじさん】。トレッキングポール2本使いで、遍路は4回目。
毎日40kmくらい歩いていて、過去には1日56km歩いたこともあるそうだ。スピード自体はそう速くは無いが、ほとんど休みをとらないスタイルだそう。慣れたお遍路さんは大体こういう感じの歩き方になるのだ。
おじさんは四国で最悪だという噂の宿を教えてくれた上、当時の手記を読み上げてくれた。
「畳はボロボロ、風呂もカビだらけ、階下では主人と女将が口喧嘩。いったいどんな料理がでてくるんだろうか・・・」
うーむ、なるほど。しかしここまでひどい宿なら逆に行ってみたいという気持ちが芽生えてしまいそうだ。
実はおじさんも知らずに泊まってしまったわけではなく、あまりにヒドイ噂が気になり好奇心で泊まりにいってしまったとのこと。なるほど、納得!
あとなんか知らんが、おじさんから秘密の地図を頂いた。
なおこの時間の乗客は、お遍路さんだけだった。
彼は1度だけ使用したというコンパクトな寝袋を持参していた。駄目元で、もし使わないのであれば寝袋を売ってくれないか?と頼んだのだが、残念ながら断られてしまった。でもそりゃそうだろう。当然だ。
ここ数日で複数の人に野宿を勧められたこともあり、少しチャレンジしたい気持ちも生まれたのだが、今回の遍路での野宿は諦めることにする。
かにちゃん。
道なりに進んだら、草ボーボー地帯に突入。戻るか迷ったが、縁に登り進むことにした。
縁の幅は、約40cm。道路までの高さはは1、5mくらいだが、海側は3〜4mもあるため、単純にコワイ。なぜこんな道を選択してしまったのだろうか・・・。
昼時だけど店がなさそうだ。そう思っていた所、喫茶おとずれの看板を発見。
ヘンロ小屋を久々に見た。
これって徳島県には多いが、高知県にはあまり無いような気がする。
もう2kmくらい歩いたような気がするのだが、それらしい建物は見当たらない。
コンビニの脇にある休憩所の張り紙を見る。明日宿泊予定のゲストハウスの新聞記事だ。
喫茶おとずれさんオススメ!!なのか。ちょっと後で話を聞いてみよう。
喫茶おとずれ
「今おかあちゃんいないからうどんくらいしか作れん」とのことで、うどんを注文。
ちなみにこの店には、メニューはない。注文の多い喫茶店ならぬ、メニューのない喫茶店だ。そんな喫茶店があるんだな。
ご主人の話だと、今年はお遍路さんがかなり少ないそうだ。きまぐれにメモしていたそうだが、今年この店に寄ったお遍路さんは70人ほどらしい。
「ゲストハウス40010(しまんと)をオススメしてるみたいですけど、どんな所なんですか?」
「いや、行ったことはないんやけど」
「えぇ!」(行ったことないのぉ?!)
「いや、その方がお客さんが来るとおもってなぁ」
聞くところによると知り合いなのだそう。なるほど。優しいおじさんである。
コーヒーやらなんやら色々接待して頂いたり、居心地が良かったのもあって、なんだかんだで1時間以上滞在してしまった。
今日の目的地の大間駅まではもうすぐ。
15時に大間駅近くのドラッグストアに到着。電話をして、ご主人が迎えに来てくれるまで待機。
今日のお宿 森の巣箱
ここは、山の中の集落にある木造校舎を改装した宿だ。
森の巣箱の【代表のおじさん】が、プロジェクターを使ってこの宿や集落の現状をざっくりと説明してくれた。
なんでこんなもんがあるのか聞いたら、おじさんは成功集落のロールモデルとして全国の様々な場所に講演に行ってるからなのだそう。
へー。そりゃすごい。
元々この宿は、集落を離れた子供達が孫を連れて里帰りする際の宿泊施設として作られたものらしい。しかしいざ蓋を開けてみたら県外から多数の宿泊客が訪れるという嬉しい誤算がおき、6月に行われているイベントの蛍祭りではなんと1000人もの人が集まったとか。
ここは住民が100人もいない山の中の集落なのだが、田舎の潜在能力の高さに驚いた。
地元の人がなんにもないと思っているような田舎でも、都市部の人にとっては大自然という魅力があるってことなんだろう。実際に私にも魅力的に映ったもの。
私の他には4組のお客さんが来ていたが、皆リピーターだった。どうもリピーターが多いのがこの宿の特徴らしい。
夕食時には、村人含め、15人くらい集まったのだが、今日はかなり少ない方なんだそう。というのも明日、村民皆が参加する運動会があるとのことで、その影響らしい。
なおこの宿は夜が本番だそうだ。要は宴会が行われるとのことだが「ちょっとやることがあるのですいません」といって私は抜けてきた。大人数で宴会みたいなのは苦手だからだ。
しかし部屋に戻ったはいいが、ポケットWi-Fiは圏外だった。
どうしよう・・・。
「郷に入れば郷に従えなのか?」とか、「宴会はこの宿に泊まる者の通過儀礼なのかもしれないぞ」とか、「そもそも無理にお願いして泊めてもらったのに参加しないってのは人としてどうなの?」など、あれこれ悩んだ結果、意を決して宴会に参加することに決めた。
もう破れかぶれの万歳突撃だ!
「田舎の人間は閉鎖的なんですよ」なんて言ってた代表のおじさんも皆も酒が入ることで、開放的になっていく様子を目の当たりにし、この宿は夜が本番という意味を理解した。
この宿のウリはアットホームな所というか・・・ひょっとしたら田舎のない人の抱く理想の田舎像そのものなのかもしれない。
歩数 | 33900 歩 |
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距離 | 約 22 km |