仙人現るの巻
福岡のおじさん
萩森さん宅に一緒に泊まった【福岡のおじさん】は、年一回遍路しているそうだ。
靴はやっていくうちに変化し、最終的に地下足袋になったとのこと。剃髪して台車をガラガラ引いてるもんだから、よく職業遍路に間違われるのが悩みの種なんだとか。
托鉢やお接待で生活しているお遍路さんのこと。ちゃんと巡礼している修行僧みたいな人もいるのかもしれないが、大抵ホームレスのような人が多い。
「歩いてると色々考えるでしょ?」と問われたが、遍路初心者にはまだ考えるだけの心の余裕はない。
でもくだらないことはふと思い出したりはするかも・・・。
よしよし、今日の天気は良さそうだ。
右側のトンネルは、歩行者と自転車専用トンネルのようだ。
2つもトンネルいるかぁ?
・・・と思ったが、よくよく考えてみたら道路拡張に伴い大きなトンネルを作ったっぽいな。おそらく小さいトンネルは、旧トンネルの再利用なんだろう。
全く同じものを使っていたので、一瞬自分が落としたのかと思ってしまった。でもそんなわけない!
本当にそう思うなら、まずはその看板を下ろすことから始めたら良いのではないでしょうか。
橋を渡った後、未舗装路の道を歩く
・・・が、これは『のいちウォーキングトレイル』という全然関係のない遊歩道だった。変なとこを迂回しただけで、全く進んでないことにショックを受ける。ギャー!
なんかよく分からないが、面白そうな施設を横目に進む。
ちょこちょこ迷ったが、この坂を登れば、ようやく寺だ。
第28番 大日寺(だいにちじ)
福岡のおじさんもいた。もう読経も終わったようで、座って休憩していた。早いな。
錦堂 野市本店
参拝後、寺の前にある売店で、一休み。
西日本ではおなじみ・・・なのかもしれないが、東日本にはほとんど売ってない“ ひやしあめ ”を飲む。
店の奥さんによると、お遍路さんの数は2005年辺りがピークだったそうな。で、「何年前ですね〜」みたいな返しをしたのに、なにやら濁したような返事がくる。
ん?・・・なんで?
しかしその理由はすぐに判明した。私が西暦をうっかり間違えていたことに気づいたのである。
納め札には、西暦の下二桁だけ書いていたのだが・・・
今は2007年じゃなく、2017年だ!大馬鹿野郎!
あまりにテキトーすぎて爆笑してしまったが・・・笑い事じゃない。
年どころか、何月だとか何日とか何曜日だとか、普段あまり意識しないような生活をしていたってのもあるが、これはちょっとひどい。少々頭がボケてきているようだ。
一級河川ものべ川を越える。
逆打ち遍路さんに声をかける。
「ぎゃくうちですか?」
「ぎゃくうちじゃなくて、さかうちっていうんだよ」
そうなんだ・・・。
トラクターに乗ったおじさんに教えてもらった休憩所で、一休み。
またもや逆打ち遍路さんに遭遇。
「さかうちですか?」
「さかうちじゃなくて、ぎゃくうちっていうんだよ」
・・・・・・・・。
どうやら言い方はどっちでもいいみたいだ。
これに関しては、“ おにぎり ”と“ おむすび ”の違いのようなものなんだろう。
この辺の稲はまだ青い。
29番札所までは、あと2km。
食事をするところがなさそうなので、ファミマで昼食。
先ほど寄ったコンビニからうっすら見えていた店舗『へんろいしまんじゅう』。
ひょっとしたら飲食店かもしれないと思っていたのだが、まんじゅう屋だった。コンビニで食事しておいて正解だったようだ。
カフェで奥様方がブランチを食し、優雅なひと時を過ごしていた。ちびっこ達と共に。
なんというか・・・こちらとあちらでは、まるで別世界のように感じた。
なんだかやけに空が低く感じるが、雲の影響だろうか。
第29番 国分寺(こくぶんじ)
区切り打ちのおじさんと話す。宗教的な側面は一切無視して、完全にスタンプラリー感覚で廻っているそうだ。
「信仰心0の状態で、廻り終わった後どうなるのか楽しみだ」
そんなことを言っていたが、個人的にはそういう遍路もありだと思う。私自身、一応宗教的な部分は踏襲しつつも、旅や散歩の延長みたいな感じで廻ってるからそう思ってしまうのかもしれないけども。
でも実際、敬虔な仏教徒(真言宗)で遍路に来たって人はいるのだろうか。勝手な憶測ではあるが、ほとんどいないに等しいのではないだろうか。
もしいたらすいません。
畦道を進む・・・が、これがなかなか厄介な道だった。
先の道が草で隠れていて全然見えないのだ。どの方向に続いているのかが分からないため、分岐点でかなりウロウロしてしまった。
その上、この辺りでまたも道を間違えたことに気づく。どうやら明後日の方向に向かってかなりの距離を進んでしまったようだ。
ち、ちくしょう!
ここまで大幅に道を間違えてしまったのは初めてだ。あーあ・・・。
第30番 善楽寺(ぜんらくじ)
野宿メインで廻っているという【香川の若者】(20才)と会う。
今日の宿は未定と言っていたので、私が泊まる宿に誘ってみた。了承してくれたため、宿に電話をした後、2人で土佐一宮駅から電車に乗り高知駅へ(1駅)。
今日の宿 ゲストハウス 土佐
宿に荷物を置いた後、食事をとるために2人で夜の繁華街へと繰り出す。
高知のアーケード街は、かなり大きい。
高知と言えば鰹のタタキが有名だが、本場のものは塩で食べるのだそうだ。そこでゲストハウスのオーナーが勧めてくれた『ひろめ市場』を探した・・・のだが見つからず、ラーメンを食って帰宿。
仙人
ゲストハウスを手伝っているというほぼ職業遍路の【仙人】。
およそ3年くらい遍路をしていて、20回くらい廻っているそうだ(乱れ打ちも込み)。どうも萩森さんの情報の出どころは仙人経由のものらしく、言うなれば萩森さんの懐刀のような存在みたいだ。
「夜なべして書いてあげるよ」と、私の遍路地図に補足情報を色々と書きこんでくれた。
神奈川のイカ太郎さん
地図とにらめっこしてる【イカ太郎さん】(奥)と香川の若者(手前)。
イカ太郎さんは、野宿メインの上、なんと裸足でお遍路しているそうだ。
四人で記念撮影。とぼけた表情をしているのが『私』だ。
自分の写真映りの悪さに少し落ち込むが、これは今に始まった事ではないし、普段からいつもやる気のないとぼけた面してるよな、と思った。そのまんまっちゃそのまんまである。
ただ写真を撮られる(にっこり笑ってハイチーズみたいの)のが昔から苦手なので、それを改善する必要はあるのかもしれない。
就寝
昨日に引き続き、今日も相部屋だ。私と香川の若者が同じ部屋で、イカ太郎さんは襖を隔てた隣の部屋という配置である。
就寝中寝言を言ってしまうことを伝え、予備の耳栓を香川の若者に渡す。そして2人で耳栓をつけて床についたのだが、急に横で香川の若者が腹を抱えてゲラゲラと笑いだした。
何事だろうと耳栓を外したところ、とんでもない音量のいびきが耳に入ってきた。イカ太郎さんのいびきだった・・・。
しかも隣の部屋のイカ太郎さんは、「お休み!」と言ってから1〜2分で寝たようだ。すごい。すごすぎる。この精神はぜひとも見習いたい。
もっとも真似できる類のものでは無いのだけれども(彼はオープンマインドなのだ)。
歩数 | 53180 歩 (道を間違えすぎた為) |
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距離 | 約 32 km |