香川の若者に誘われたので、一緒に歩くことした。
高知駅から電車に乗り、遍路道へ戻る。
その道中、昨日のいびきの話になり、「いや、あれはいびきなんて生易しいもんじゃないっす。耳栓してんのに聞こえてくるんですもん。もはや怪獣の鳴き声っすよ」という彼の冗談に笑う。
なんにせよアクシデントを笑い話にできて本当によかった。
それぞれの遍路スタイルの巻
第31番 竹林寺(ちくりんじ)
私はまだ膝が悪いため、遍路道(未舗装路の山道)ではなく車道を使って下山。
香川の若者
彼のバックパックの重量はなんと20kgくらいあるそうだ!
テントを持っていないのになぜそんなに重いのか尋ねると「服が重い」との返答。はぁ〜(唖然)。また雨が降ってないのにザックカバーをつけている理由は、ザックとカバーの隙間にも荷物を入れているから。おまけに左手のビニール袋も荷物なんだと。
狂ってる!
と思ったが、色々とお接待してもらって、だんだんと荷物が増えてきているのだそう。
道の脇にはニャンポコがお座り。
ひょっとしたら舗装路からの方が見晴らしは良いのかもしれない。
ちんたら歩いてちょこちょこ休憩ってのが、彼の遍路スタイルらしい。
かなりのスローペースなので、他のお遍路さんにどんどん抜かされていき、2〜3日で道中会う人が完全に入れ替わるそうだ。
以前は1日40kmくらい歩いたこともあるそうだが、そういう遍路は性に合わないのでやめたらしい。今はゆっくりマイペース。それが彼の出した答えのようだ。
看板の裏側に、逆打ちシールを発見。
逆打ちの場合は、標識の表側ではなく、裏側に貼ってあるのが普通なのかな。
工事で遍路道が通行止め。
警備員のおばさんに聞いたら回り道しなくちゃいけないらしい。まぁ、長い遍路道ではそういうこともあるだろう。
大きな道路(高架橋)を作るために工事をしていた。香川の若者によると、現在TVCMでよく流れているそうだ。
どんどん便利になっていく反面、自然が無くなってしまう。どちらが良いとか悪いとかではなく、景観は徐々に変わっていく。
道を尋ねているところを撮影しようとしたが、もたもたしていたせいで「こんなもんも撮るんすか〜、大変っすね」の図。
基本的に香川の若者は地図を持たずに、遍路シールをたどって進む。分からなくなったらその辺の人に道を聞いたり、方角を聞いたり・・・そんな感じ。おまけにスマホ(携帯電話)すら持ってないそうだ。
もし仮にこれを若者ではなく、いい年こいたおっさんがやったら、「地図や、スマホの地図アプリくらい用意しろよ。何を考えてるんだ」と世間から非難される可能性が高い。実際にそんなおっさんに遭遇したら、さすがの私でもそう思っちゃう。
こういう遍路ができるってのは若者の特権なんだろう。
なお彼は民宿にただで泊めてもらったりしたこともあるそうだ。お遍路さんって定年退職後のおじさんがほとんどだけど、チャンスさえあれば若いうちにやった方がいいような気がする。多分おじさんと若者の遍路は全くの別物だろうから。
ご飯屋さんで昼食。この近辺は食い物屋が少ないので、他のお遍路さんも皆ここで昼食を取っていた。
香川の若者が以前お接待でもらったという蚊取り線香(ジャンボサイズ)。
野宿には必須アイテムらしい。
ちなみに中身はジャンボではなく、普通サイズの蚊取り線香だった。
第32番 禅師峰寺(ぜんじぶじ)
香川の若者は平地はスローペースだが、登りに関しては異様に早い。どうやら山は得意なようだ。
また彼は読経帳に書いてあるすべてのお経をあげているのだそう。これは色々とお接待してくれた方の分まで読経するということが理由なんだとか。
タイミングが悪いと納経所で足止めを食らう恐れがある。が、今回はセーフ。
「ねえ、どうする?次の寺も打つ〜?」
そう声をかけてきたのは20代の女。どうやら船の時間に間に合うかどうかを懸念しているようだ。
え?いやいや急げば間に合うでしょ!
東京2人組おじさん
渡し舟に乗るため、急ぐ人々。
写っていないがシンガポールの男性も一緒だ。なお兵庫のおじさんは離脱したらしい。
せかせか歩くのは好きじゃないとのことで、ここで香川の若者と別れる。彼は船ではなく、橋で川を渡るそうだ。
しかしあれだな。彼とは朝から5時間以上一緒に歩いたのだが、人に合わせて長時間歩くというのは思った以上にフラストレーションが溜まるということがわかった(人柄とは関係なく)。
早過ぎる人はもちろんダメだが、遅過ぎる人でもダメだ。自分のペースで歩くというのは結構大事。
これは忠犬ハチ公みたいなニュアンス・・・ではないだろうな。
犬に糞をさせるなということを端的に表現するとこうなるらしい。謎の4文字縛りで。
「今日はこないだの代わりに引っ張ってってもらおうかな〜」と20代の女が言うので、先日の借りを返すべく先導する
・・・が道を間違えてしまい、渡し舟の場所を通り過ぎてしまった。怒られた。
県営渡船 種崎待合所
船着場に到着。
【東京二人組おじさん】と話したところ、二人は友人で一緒に廻っているそうだ。経験者(A)と初心者(B)のコンビらしい。
ここが船着場で、あの船にでも乗るのかな・・・
と思っていたら、これ自体が船だったので動き出した時にはびっくり仰天!なお気づいていなかったのは私だけだった模様。
乗り物って速いな・・・本当に。
第33番 雪蹊寺(せっけいじ)
15時半頃到着。
昨晩お世話になったゲストハウス土佐のオーナーに電話をして迎えにきてもらう。
桂浜
今日は中秋の名月らしい。オーナーの粋な計らいで、桂浜観光につれて行ってもらえることに。
ででーん!とそびえ立つ龍馬像。
ここは有名な観光名所なので、夕方でも結構人がいた。
桂浜は、沖の方に流されていってしまう危険な海らしく、遊泳禁止。というか、入ること自体禁止で、足をつけたりするのもダメなようだ。
誰かが波打ち際に入ると、逐一「やめてー」みたいなアナウンスが放送されていた。
仙人に遍路をやってみてどうだったか聞いてみた。
「どうやっても人に迷惑がかかってしまうし、人は一人では生きていけないということが分かった」というようなことを言っていた。そうか〜。
彼は自然の風景がよく似合う。
外国からの観光客に「OH!SAMURAI!」等と声をかけられたり、よく写真を撮られるそうだ。彼らの気持ちはよく分かる。こんなに異国情緒溢れる風貌の人間はなかなかいないもの。
オーナーと合流し、桂浜近くの別の浜辺に場所を変え、海に浸かる。
海水が冷たくて気持ちがいい。
波の大きさは一定ではなく、数回に1度はデカい波が来るようだ。知らんかった。
海っていいな。なにがいいのかは具体的にはよくわからんが・・・。
ひろめ市場
その後、飯を食う為、昨日行けなかったひろめ市場で降ろしてもらった。
あれ?ここは昨日行ったところじゃないか!
昨晩の香川の若者の言葉が頭をよぎる。
「いやここじゃないっす、俺一回行ったことあるんでわかるんすよ。もっと奥に入ったとこですね」
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
あの野郎テキトーなこと抜かしやがって!
と思ったが、どうしても行きたかった所というわけでもないので、特に問題なし。ただもっといいもん食わせてあげられたのに、とは思った。
なおひろめ市場は飲み屋要素が強い店が多く、一人で行くには微妙な感じだった為、ココイチでカレーを食って帰った。
今日の宿 ゲストハウス土佐
この日の洋室(ドミトリー)は、私一人。和室には、高知観光に来た若い女性3人組が泊まっていた。
仙人は、次に廻る巡礼を最後の遍路にしようと考えているそうだ。いつ頃出るのか聞いたら「そろそろ出る予定なんだけど、明日は萩森さんからの紹介で剃髪した尼さんが来るらしいんだよね〜」とのこと。
剃髪した尼さんか。やっぱりお坊さんも遍路をするみたいだ。
歩数 | 29723 歩 |
---|---|
距離 | 約 17 km |